ソロハイキング用のクッカー選びで悩んでいませんか?軽量性を重視すると機能性が犠牲になり、多機能を求めると重くなってしまう──そんなジレンマを解決してくれるのが、パーゴワークスから2025年8月に発売された「トレイルポットR500」です。「究極の山旅クッカー」という触れ込みで登場したこのクッカーには、30gのシリコンキャップに驚くほど多くの機能が詰め込まれています。果たしてその実力はいかほどなのか、実際に使って徹底検証してみました。
【なぜこのクッカーが気になったのか】

パーゴワークスといえば、スタッキングへのこだわりと実用性を追求したモノづくりで定評のあるブランドです。今回の「トレイルポットR500」も、その例に漏れず独特な設計思想を持っています。価格は税込7920円と、決して安くはありませんが、「究極」と銘打つからには相応の理由があるはずだと考え、早速購入して検証することにしました。

このクッカーの最大の特徴は、内径88mmという絶妙なサイズ設定です。一般的な500mlクッカーは110サイズのOD缶がすっぽり入るサイズで作られていますが、トレイルポットR500は違います。OD缶を逆さまに収納して、缶のフランジ部分で止まるサイズに設計されているのです。
実は2025年、エバニューから発売された世界初の0.2mm厚チタンカップ「APEX CUP」も、この同じサイズを採用しています。これが2025年のトレンドサイズなのかもしれません。
【まずはここがすごいと感じました】

トレイルポットR500の真価は、重量30gのシリコンキャップにあります。一見すると重量増に思えますが、この30gで得られる機能の多さを考えると、むしろお得だと感じました。
基本スペックは外径92mm、内径88mm、高さ103mm、厚さ0.4mm、容量500ml(満水)、重量はクッカー本体70g、シリコンキャップ30gの合計100gです。競合のエバニューマグポット500フラット(78g)と比較すると、シリコンキャップ分だけ重くなっていますが、その機能性を考えれば納得できる重量です。

シリコンキャップの機能は驚くほど多彩です。密封性、ハンドル収納機能、調理時の蓋、取っ手、小物置きという5つの役割を果たします。特に感動したのがハンドル収納機能で、クッカーのハンドルを上下にスライドさせることで、シリコンキャップとクッカーの間に挟んで固定できるのです。これで「ハンドルぶらぶら問題」が完全に解決されます。
【実際に使って感じたこと】

実際に350ml程度の水を沸かしてみると、シリコンキャップを逆さにして蓋として使用できました。吹きこぼれることもなく、沸騰時にカタカタ音が鳴らないのもこだわりのポイントだそうです。

スタッキング性能も優秀で、公式では7.5cmのSOTOアミカスとの組み合わせを推奨しています。私の愛用しているポケットロケット2(収納時7.9cm)もギリギリ収納できました。下にバーナーヘッド、その上にOD缶を逆さにスタッキングし、シリコンキャップでハンドルロック──これだけで湯沸かし周りのアイテムが全て揃う素敵なスタッキングが実現します。

容量500mlというのも絶妙で、アルファ米にお湯を入れて、食後のコーヒーを飲める分量のお湯を沸かせる、ミニマムなソロハイキングにちょうどいいサイズです。
【正直に感じたデメリットや注意点】

用してみて気になった点もあります。まず、底面の形状です。底の部分の曲がる角度がついているため、平な底の面積がやや小さくなっています。これによりアルコールストーブや固形燃料を使う際、載せづらさを感じました。風防兼五徳タイプのものを使おうとすると、載せる位置がシビアになります。

また、ポケットロケット2との相性も少し気になりました。五徳の内側2つの出っ張りにしかかからず、同じ内径のエバニューAPEX CUPと比較すると安定感に差を感じました。アミカスなら五徳の幅が狭いので問題ないと思いますが、手持ちのバーナーとの相性は購入前に確認した方が良いでしょう。
シリコンキャップの密封性については、簡単な食材をフードコンテナとして使用することは可能ですが、水分を入れた状態で横に倒すと漏れる可能性があります。完全密封ではない点は理解しておく必要があります。

競合製品との比較では、エバニューのマグポット500フラット(78g)と比べて22g重くなりますが、シリコンキャップの多機能性を考えれば妥当な重量差です。むしろ、この30gで5つの機能を得られるのは非常にコストパフォーマンスが高いと言えます。

スタッキングの相性についても検証しました。パーゴワークスのトレイルカップ300は外側の樹脂製カップがピッタリハマります。エバニューの250チタンも多少隙間は開きますが、しっかりスタッキング可能です。TOAKSの550サイズはハンドルスペースの収まりが良く、ちょうどいい感じにスタッキングできました。
価格面では7920円と決して安くはありませんが、この多機能性と完成度を考えれば、ソロハイキング用クッカーとしては十分検討に値する価格設定だと思います。パーゴワークスらしい細部へのこだわりと、実用性を両立した製品と言えるでしょう。
まとめ
パーゴワークス「トレイルポットR500」は、シリコンキャップの多機能性と優秀なスタッキング性能が光る、まさに「究極の山旅クッカー」と呼ぶにふさわしい製品です。特にSOTOアミカスユーザーや、機能性重視のソロハイカーには強くおすすめできます。底面形状やバーナーとの相性など、細かい注意点はありますが、パーゴワークスらしい完成度の高いモノづくりを体感できる一品です。ソロハイキング用のクッカーを検討中の方は、ぜひ店頭で実物を手に取って、あの「ぺこぺこっ」というシリコンキャップの感触を体験してみてください。きっと癖になるはずです。